介護老人保健施設(老健)のPT・OT・ST転職リアル|仕事内容・年収・適性
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介護老人保健施設(老健)のPT・OT・ST転職リアル|仕事内容・年収・適性
老健(介護老人保健施設)は、病院と在宅の「橋渡し」として機能する施設です。
リハビリ専門職にとっては「急性期・回復期ほど速くなく、在宅ほど孤独でもない」という働き方が可能な職場として、一定の需要があります。ただし、「介護施設だから楽だろう」「病院と同じ感覚でいける」という認識で入職すると、思わぬギャップに直面することがあります。
老健でのリハ職の仕事の実態を、制度的な背景を含めて正直にお伝えします。
この記事の信頼性について
監修: 現役医師(放射線治療科)
大学病院勤務。老健との医療連携・入退所に関わる経験を持つ立場から執筆。本記事は個人見解です。
老健とは:制度の基本を整理する
介護老人保健施設(老健)は、介護保険法に基づく施設です。病院から退院したが自宅に帰ることがまだ難しい高齢者が、在宅復帰を目標に入所・リハビリを受ける施設として位置づけられています。
老健の主な特徴
- 医師の常勤配置が義務(入所100人あたり1名以上)
- PT・OT・STの配置基準あり(入所100人あたりPT/OT/STで1名以上)
- 3ヶ月ごとの在宅復帰可能性の評価と更新が必要
- 2024年度の介護報酬改定で「在宅復帰・在宅療養支援機能」の強化が図られた
つまり老健は、特養(特別養護老人ホーム)や有料老人ホームと異なり、「在宅復帰を目指す」という明確なゴールのある施設です。リハ職にとっては、「回復を目的としたリハビリを担う」という点で、病院リハビリに近い感覚を持ちやすい環境です。
老健でのリハ職の仕事内容
PT(理学療法士)の主な業務
老健のPTは、歩行・移乗・ADLの改善と在宅復帰に向けた機能訓練が中心業務です。
- 個別リハビリテーション(運動療法・物理療法・ADL訓練)
- 集団リハビリテーション(体操・バランストレーニング)
- 自宅訪問(家屋評価・退院前後の環境確認)
- 退院前カンファレンスへの参加・ケアプランとの連携
特に転倒リスク評価と在宅での安全な動作の確立が、老健PTに強く求められる専門性です。
OT(作業療法士)の主な業務
老健OTは、日常生活動作の自立支援と生活機能の向上が中心です。
- 食事・更衣・整容・入浴動作の訓練と環境調整
- 認知症高齢者への生活行為支援(MTDLP の活用)
- 手工芸・園芸・音楽など作業活動を用いた介入
- 「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」の要件となる評価・介入
老健でのOTは、認知症を合併した高齢者への関わりが多くなる傾向があり、この分野への専門的な関心があるOTにとってはやりがいを感じやすい環境です。
ST(言語聴覚士)の主な業務
老健STは、嚥下機能の評価・訓練と言語機能の維持が主な業務です。
- 摂食嚥下評価(RSST・MWST・FT)と食形態の管理
- 嚥下訓練(間接訓練・直接訓練)
- 失語症・高次脳機能障害の評価と維持期介入
- 「経口移行加算」「経口維持加算」の算定に必要な評価・介入
ST が老健で特に関与する「経口維持加算」は、胃ろうや経鼻栄養を使用している入所者への経口移行支援に関わる加算であり、STの専門性が収益に直結する仕組みがあります。
老健の加算制度とリハ職の関係
老健では、リハビリに関連した介護報酬加算が複数設定されており、これらを算定できているかどうかが施設の収益とリハ職の待遇に影響します。
| 加算名 | 関連する職種 | 概要 |
|---|---|---|
| リハビリテーションマネジメント加算 | PT・OT・ST | 定期的なリハビリ計画の評価・調整 |
| 認知症短期集中リハビリテーション実施加算 | OT | 認知症入所者への集中的な介入 |
| 短期集中リハビリテーション実施加算 | PT・OT・ST | 入所後短期間の集中リハビリ |
| 経口移行加算・経口維持加算 | ST(医師・管理栄養士と連携) | 経管栄養から経口への移行支援 |
| 在宅復帰・在宅療養支援機能加算 | 多職種 | 在宅復帰率・在宅サービス利用率が要件 |
リハ職が加算の要件に関わっている施設は、リハビリへの投資意識が高く、待遇改善につながっている傾向があります。転職先の老健がどの加算を算定しているかを確認することで、「リハビリにどれだけ力を入れているか」が分かります。
年収の実態
老健での PT・OT・ST の年収は、施設の規模・加算算定状況・地域によって差があります。
| 経験年数 | 推定年収レンジ(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 1〜3年目 | 300〜370万円 | 初任給は特養より高めの傾向 |
| 5〜10年目 | 360〜430万円 | 加算算定が充実した施設では高くなる |
| 10年以上(主任・リーダー) | 400〜500万円 | 管理職手当・加算連動が大きい |
急性期病院と比べると低くなるケースがありますが、残業が少ない・精神的消耗が相対的に少ないという環境込みで評価すると、満足度が高くなるケースも多いです。
老健 vs 特養 vs 有料老人ホーム:リハ視点での比較
| 比較項目 | 老健 | 特養 | 有料老人ホーム |
|---|---|---|---|
| リハビリ目標 | 在宅復帰 | 生活維持・看取り | 施設による |
| 医師の関与 | 常勤医師あり | 嘱託医(月数回)が多い | 施設による |
| 個別リハの量 | 多い | 少ない施設も多い | 施設による |
| STの需要 | 嚥下加算・経口維持で需要高 | 限定的 | 施設による |
| 年収水準 | やや高め | やや低め〜中程度 | 運営母体による差が大 |
リハビリに積極的に取り組みたい PT・OT・ST にとって、老健は「介護施設の中でリハビリの存在感が最も大きい」という点で、特養・有料老人ホームより選ばれやすい傾向があります。
老健転職に向いている人・向いていない人
向いている人
- 在宅復帰支援というゴールのある仕事に意義を感じる
- 高齢者との長期的な関わりを大切にしたい
- 急性期・回復期の消耗を減らしながら専門性を発揮したい
- OTとして認知症ケア・生活行為支援を深めたい
- STとして嚥下・経口移行支援に力を入れたい
向いていない人
- 急速な機能回復を実感しながら働くことにエネルギーを感じる
- 高度医療・複雑症例の管理を続けたい
- 新人・若手として多様な症例経験を急ぎたい
転職前に必ず確認すべき7つのポイント
-
在宅復帰率と施設区分:老健は「在宅強化型」「超強化型」など区分によりリハビリへの力の入れ方が変わります。在宅復帰率を担当エージェントに確認してください。
-
算定している加算の種類:リハビリマネジメント加算・認知症短期集中リハ加算・経口維持加算などの算定有無は、「リハビリが機能しているか」の指標です。
-
PT・OT・STの人員配置(一人職場でないか):少人数体制の場合、相談・フィードバックの機会が少なくなります。
-
多職種カンファレンスの実態:在宅復帰に向けた多職種チームが実質的に機能しているか、会議の頻度と内容を確認してください。
-
自宅訪問・家屋評価の機会があるか:在宅復帰支援に本格的に関わるには、実際の家屋評価への参加機会が重要です。
-
研修・外部学習への支援体制:老健は院内研修が少ない傾向があります。学会参加・外部研修への費用補助の有無を確認してください。
-
残業・夜勤の実態:多くの老健は夜勤なしですが、勤務形態は施設によって異なります。
よくある質問 FAQ
Q1. 急性期・回復期からの老健への転職でスキルが落ちる心配はありますか?
意識して学習を続けなければスキルが停滞するリスクはあります。ただし、「在宅環境の評価」「認知症リハビリ」「在宅復帰の調整力」など、病院では積みにくいスキルを深める機会でもあります。外部研修への積極参加を続ける前提で転職先を選べば、スキルが停滞しにくいです。
Q2. 老健はPTとOTのどちらが求人が多いですか?
老健の配置基準はPT・OT・STで合算のため、施設ごとに構成が違います。一般的にはPTの採用が多い傾向がありますが、認知症ケアを重視している施設ではOTを積極的に採用しているケースがあります。STは嚥下加算関連で需要があります。
Q3. 老健での転職は転職エージェントと求人サイトどちらが良いですか?
転職エージェントを利用することをすすめます。老健の在宅復帰率・加算算定状況・職場の雰囲気などは求人票には書かれていないことが多く、担当者が施設情報を持っているかどうかが転職後のミスマッチ防止に大きく影響します。
まとめ
- 老健は在宅復帰を目標にした「医療と介護の中間施設」であり、リハビリが機能している施設では専門性を発揮しやすい環境
- PT・OT・STそれぞれに、老健でしか深まらない専門領域(在宅復帰支援・認知症リハ・嚥下経口移行)がある
- 年収は急性期夜勤ありと比べると低くなるケースがあるが、残業・精神的消耗込みで評価すると満足度が高い傾向
- 転職前に「在宅復帰率」「加算算定状況」「一人職場でないか」を必ず確認する
- 転職エージェントを活用して、施設の内部情報を事前に収集することが重要
老健を含む介護施設・訪問系の求人比較については、以下の記事も参考にしてください。
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現役医師プロフィール
現役医師(放射線治療科)。大学病院勤務。老健との医療連携・入退所に関わる経験を持つ。将来のクリニック開業準備中。リハキャリアガイドの運営・監修を担当。
本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。介護報酬・施設基準は改定により変わる場合があります。転職に関する個別の判断は、各転職サービスの担当者またはキャリアカウンセラーにご相談ください。