介護施設のOT・PT転職|年収・職場環境・適性を医師目線で解説

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介護施設のOT・PT転職|年収・職場環境・適性を医師目線で解説

病院リハビリで働き続けることへの疲れが積み重なってきたとき、選択肢として浮かぶのが介護施設への転職です。

「年収が下がるのでは」「スキルが落ちるのでは」という不安は多くの OT・PT から聞きます。

ただ、介護施設のリハビリは「病院の下位版」ではありません。求められるスキルも、患者との関わり方も、病院と本質的に異なります。病院でくすぶっている OT や PT に、介護施設という選択肢が「合っているかどうか」を判断する材料を、医師の目線から提供します。


この記事の信頼性について

監修: 監修医師(放射線治療科)
大学病院勤務。研修医時代からリハビリ連携を経験。将来のクリニック開業準備中。本記事は個人の見解によるものであり、特定の施設を推奨・批判するものではありません。


まず確認:介護施設3タイプの根本的な違い

OT・PT が転職先として考える「介護施設」は、法律上・機能上で大きく3種類に分かれます。この違いを理解せずに転職すると、「思っていた仕事と違う」というミスマッチが起きやすいです。

介護老人保健施設(老健)——在宅復帰を目指す中間施設

老健は、病院から退院した後、すぐに自宅に戻ることが難しい状態の高齢者が、リハビリを受けながら在宅復帰を目指す施設です。医療と介護の中間的な性格を持ち、医師の常勤配置が義務づけられています。

リハビリ目標は「在宅復帰」であり、OT・PT・ST の関わりは病院の回復期に近い感覚があります。3ヶ月ごとに「この方は在宅に戻れるか」を判断する仕組みがあり、短中期の目標設定とアウトカム管理が求められます。

医師の立場から見ると、老健のリハビリ職は病院と同等の情報共有と連携が必要で、退院後の患者の「在宅に向けたリスク管理」を一緒に考えられる PT・OT を必要としています。

特別養護老人ホーム(特養)——生活支援と看取りの場

特養は、要介護3以上の高齢者が長期入居する「生活の場」です。在宅復帰を目標としないため、リハビリの目的が老健とは根本的に異なります。

ここでのリハビリの目標は「機能回復」ではなく「現状維持」と「その人らしい生活の継続」です。車椅子への移乗を安全に行えるよう保つ、食事を自分で食べ続けられるよう関わる、手工芸や音楽など好きな活動を続けられるよう支援する——これが PT・OT の仕事の中心になります。

配置人員に「OT または PT 1名」という施設も多く、一人職場になるケースが珍しくないです。

有料老人ホーム——民間運営の多様なグレード

有料老人ホームは介護付き・住宅型・健康型に分かれ、施設によって医療対応力やリハビリ体制の差が極めて大きい。介護付き有料老人ホームでは特養に近い機能を持つ施設もあれば、リハビリ職の配置が薄い施設もあります。

転職前に「どの程度のリハビリ体制か」を具体的に確認することが特に重要な施設タイプです。


病院リハと介護施設リハ:仕事の質の6つの違い

1. 担当する患者数と1回あたりの時間

病院の急性期では1日14〜18単位(1単位20分)が一般的です。老健では個別リハビリとして1日6〜8単位程度の担当が多く、時間的余裕が相対的にあります。

一方、特養では集団体操や生活リハビリの比重が高く、個別リハビリの時間が少ない施設もあります。「がっつりリハビリを届けたい」という志向性の強い PT には物足りなさを感じる場合があります。

2. リハビリの目標設定の方向

病院では「退院までにここまで回復させる」という短期目標が中心です。介護施設——特に特養や有料老人ホーム——では「この方の残りの人生をどう支えるか」という視点が必要です。

これは技術の問題ではなく、価値観の問題です。「回復させること」に達成感を見出すタイプの PT より、「その人と長く関わり、できることを守ること」に意義を感じる OT が馴染みやすい傾向があります。

3. 多職種連携の密度

老健では医師・看護師・介護士・社会福祉士・管理栄養士・ST との連携が日常的に発生します。カンファレンスの頻度も高く、在宅復帰の計画を多職種で組む作業があります。

特養・有料老人ホームでは、医師の関与が嘱託医として月数回という施設も多い。医師への相談がしにくい分、OT・PT がより自律的な判断を求められます。

4. 緊急対応と医療処置の頻度

病院と比べると、介護施設での緊急対応は相対的に少ない。急変時の対応は看護師が主体であり、PT・OT は日常の安定したリハビリが業務の中心です。

これを「楽」と感じるか「物足りない」と感じるかは人によって異なります。

5. 認知症ケアとの関わり

介護施設の入居者の多くは認知症を合併しています。病院リハでは「指示理解」を前提にすることが多いですが、介護施設では言語指示が通りにくい方への関わりが日常です。

OT はここで本領を発揮しやすい。日常生活動作の支援・作業を通じた関わり・認知症者の生活機能訓練は、OT の専門性と直結します。

6. 記録と書類業務

老健・特養ともに介護保険書類が発生します。病院の診療録とは様式が異なり、慣れるまでに時間がかかる場合があります。ただし電子化が進んでいる施設では記録負担が軽減されており、施設によって差があります。


年収の実態:下がるのか、変わらないのか

PT・OT の平均年収(全職場平均)

厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、作業療法士の平均年収は約444万円、月給換算で30〜32万円台が相場です。理学療法士との間に資格による本質的な差はありません。

老健での年収水準

老健は介護保険施設の中でリハビリ体制が最も充実しており、PT・OT を複数名配置する施設が多いです。加算算定による収益が給与に反映される施設では、病院と遜色ない年収を提示しているケースがあります。

「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」など OT が要件となる加算が老健では設定されており、OT が収益面で重要視される構造があります。これが OT の待遇改善につながっている施設もあります。

特養・有料老人ホームでの年収水準

特養は公的施設(社会福祉法人運営)が多く、給与テーブルが安定している半面、大幅な昇給が見込みにくい施設もあります。ただ、2024年度の処遇改善加算の拡充により、介護系職種全体の賃金引き上げは進んでいます。

有料老人ホームは運営母体によって差が大きく、大手チェーンでは昇給制度が整っている一方、中小規模施設では年収が低めの傾向があります。

病院と比べた率直な評価

急性期病院の夜年収と単純比較すると、介護施設は低くなるケースがあります。ただし「残業が少ない」「精神的消耗が相対的に少ない」という条件込みで考えると、時間あたりの質は変わらないか、場合によってはむしろ良いという声も聞きます。

年収の数字だけで判断せず、「労働環境込みの満足度」で評価することが重要です。


OT が介護施設で特に求められる理由

PT と OT はしばしば「似た仕事」と思われますが、介護施設での需要の質は異なり、OT がより求められる理由を医師の処方視点から説明します。

生活行為向上マネジメント(MTDLP)の実践

日本作業療法士協会が推進する生活行為向上マネジメント(MTDLP)は、「その人が望む生活」から目標を逆算して介入計画を立てる OT 固有のアプローチです。

老健や特養では、入居者の「したいこと・できるようにしたいこと」を軸にした個別支援計画が求められており、MTDLP の実践力は高く評価されます。

認知症ケアへの専門的関与

回想法・音楽療法・園芸療法・手工芸など、作業を通じた認知症ケアは OT の専門領域です。「認知症の方に何もできない」という無力感を感じながら働く介護施設のスタッフへの専門的サポートは、OT の重要な役割の一つになっています。

日常生活動作(ADL)への直接介入

食事・更衣・整容・トイレ動作——これらの ADL への直接的な介入は OT の専門性と親和性が高い。「歩けるようになる」という PT のゴールとは別に、「日常の動作を本人がこなせるよう支援する」という OT の視点は、介護施設の目標設定と一致しています。


PT にとっての介護施設:活かせる場面と正直な課題

活かせる場面

老健では在宅復帰を目指した歩行・転倒予防リハビリが PT の主戦場です。「在宅復帰率」という明確な指標があるため、成果を実感しやすい。

特養では、車椅子の選定・ポジショニング・拘縮予防といった専門的な介入が求められます。「寝たきりにならないよう関わる」という視点は、PT のリハビリ技術が最も活きる分野の一つです。

正直な課題

急性期・回復期から介護施設に転職した PT が感じる「物足りなさ」として最も多いのが「スキルの停滞感」です。急性期の複雑な疾患管理や高負荷リハビリに慣れた PT が、維持期中心の業務に移行したとき、技術面での成長実感を得にくくなるケースがあります。

意識して外部研修に参加したり、学術的なアウトプットを続けたりする自律的な学習姿勢が、介護施設 PT には特に求められます。


医師が介護施設のリハ職に求めていること

患者の「今日の状態」を自分の言葉で話せる 「問題ありません」ではなく「昨日と比べてこう変わりました」という具体的な変化報告ができるセラピストは、継続観察ができている証拠です。老健の嘱託医や訪問診療医は、こういった情報を最も必要としています。

在宅復帰のリスクを具体的に語れる 「家に帰るとき、この動作が一番課題になります」「自宅のこの環境を変える必要があります」という形で、在宅復帰のリスクを具体的に語れる PT・OT は大きく信頼されます。

「できないこと」ではなく「できること」から計画する 老健・特養での目標設定で、「リハビリを続けてもここまでしか戻らない」という説明より「現状のこの能力を使って、この生活が維持できます」という提案の方が、家族・多職種へのコミュニケーション上も有効です。


介護施設転職に向いている人・向いていない人

向いている人

  • 高齢者との長期的な関係の中に仕事の意義を感じる
  • 「回復させる」だけでなく「生活を支える」視点が自分にある
  • 30〜40代で体力的な消耗を減らしながら専門性を深めたい
  • OT として認知症ケア・生活行為支援に力を入れたい

向いていない人

  • 「回復の実感」を仕事のエネルギー源にしている
  • 医療的な複雑症例を扱い続けたい
  • 新人〜若手で、まずは多様な症例経験を積みたい
  • 専門職間の競争や高いパフォーマンスを求める環境が好き

どちらが優れているかではなく、「今の自分に何が合っているか」の問題です。


転職前に必ず確認すべき5つのポイント

1. 個別リハビリの算定実績と加算体制

「リハビリをしっかりやっている施設か」を確認するには、個別リハビリテーション実施加算・リハビリマネジメント加算の算定状況を聞くのが有効です。加算を取っていない施設は、リハビリに力を入れていない可能性があります。

2. PT・OT・ST の人員配置と職種バランス

「一人職場か複数か」「PT・OT・ST が揃っているか」を確認します。特に OT が一人配置の施設では、相談相手がいない孤立感を感じるケースがあります。

3. 研修・外部学習への支援

介護施設は病院と比べて院内研修が少ない傾向があります。外部研修への参加費補助、学会発表支援の有無を転職前に確認することが、スキル停滞を防ぐために重要です。

4. 在宅復帰率(老健の場合)

老健では「在宅復帰・在宅療養支援機能」の区分によって報酬が変わり、在宅復帰率が高い施設ほどリハビリが機能している指標になります。この数字を転職サービスの担当者に確認することをすすめます。

5. 多職種カンファレンスの実態

「カンファレンスは月1回の形式的なもの」なのか「週1回で実質的な情報共有をしている」のかは、職場の連携文化の指標です。見学時に聞いてみてください。


転職活動の進め方

介護施設への転職は、「条件だけで選ぶ」と後悔しやすいです。現場の雰囲気・リハビリへの考え方・多職種連携の実態を事前に把握できるかどうかが、転職成功の分岐点になります。

転職サービスの担当者が「その施設のリハビリ体制についての具体的な情報」を持っているかどうかを、相談時に確認してください。「求人票に書いてある内容しかわかりません」という担当者より、「この施設はこういう特徴があります」と具体的に話せる担当者の方が、転職後のミスマッチを防ぐ情報を持っています。


よくある質問 FAQ

Q1. 老健と特養、転職先として選ぶならどちらがよいですか?

キャリアと目標次第です。「在宅復帰に向けたリハビリを実践したい」「アウトカムを意識した仕事をしたい」なら老健。「長期の入居者と深く関わりたい」「認知症ケアを深めたい」なら特養が向いています。PT は老健、OT は特養・老健どちらもフィットしやすい傾向があります。

Q2. 介護施設に転職するとリハビリの技術が落ちますか?

積極的に学習しなければ停滞するリスクはあります。ただし「生活機能の維持」「認知症ケア」「在宅環境の評価」など、病院では得にくいスキルを深める機会でもあります。意識して外部研修・学会に参加し続けている OT・PT は、むしろ専門性の幅が広がっていく傾向があります。

Q3. 病院から老健への転職で、年収はどれくらい変わりますか?

施設によって差がありますが、急性期病院の年収と比べると50〜80万円程度下がるケースもあります。ただし残業少・精神的安定という環境込みで考えると、総合的な満足度は上がるケースが多いです。転職エージェントを使い、具体的な年収水準と交渉余地を確認することを勧めます。

Q4. OT として介護施設への転職を考えていますが、精神科 OT からの転向は難しいですか?

難しくはありませんが、認知症介護施設での OT は「身体ケアの比重が高い」「認知症の行動・心理症状への対応が求められる」点で、精神科とは異なる専門性が必要になります。転職後の研修や OJT の充実度を確認してから転職することをすすめます。


まとめ

  • 介護施設のリハビリは「病院の下位版」ではなく、異なる専門性と目標設定が求められる仕事
  • 老健はリハビリ重視・在宅復帰目標、特養は生活支援・維持期、有料老人ホームは施設によって差が大きい
  • OT は認知症ケア・生活行為支援・ADL 支援の観点から介護施設での需要が高く、キャリア的にも馴染みやすい
  • PT は老健での在宅復帰支援・転倒予防・ポジショニングに力を発揮できる
  • 年収は職場によって異なるが、残業少の労働環境を加味して満足度は上がるケースが多い

転職を検討しているなら、まず情報収集から始めてください。OT 向けの転職サービス比較は以下の記事を参考にしてください。


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監修医師プロフィール

監修医師(放射線治療科)。大学病院勤務。研修医時代からリハビリ連携を経験。将来のクリニック開業準備中。リハキャリアガイドの運営・監修を担当。

本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。介護報酬や施設基準は改定により変わる場合があります。転職に関する個別の判断は、各転職サービスの担当者またはキャリアカウンセラーにご相談ください。