リハ職が退職後に受け取れるお金|失業給付・傷病手当金の基礎【2025年改正対応】
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リハ職が退職後に受け取れるお金|失業給付・傷病手当金の基礎
「辞めたいけれど、収入が途切れるのが怖い」
そのために使えるのが、失業給付と傷病手当金です。この2つは目的も窓口も違い、同時には受け取れません。
そしてリハ職には、もうひとつ知っておくべき制度があります。労災です。腰痛や頸肩腕障害は、業務との関連が問題になりうる疾患だからです。
監修: 現役医師(放射線治療科・大学病院勤務)
医療従事者の休職・退職に関わる立場から、制度の使いどころを整理しています。
⚠️ お断り 制度の要件は改正されることがあり、個別の適用可否は状況によって判断が異なります。実際の手続きは必ずハローワーク、加入している健康保険組合(協会けんぽ)、労働基準監督署、勤務先の担当部署にご確認ください。
まず全体像
| 失業給付 | 傷病手当金 | 労災(休業補償給付) | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 働ける人の再就職支援 | 働けない人の生活保障 | 業務上のけが・病気の補償 |
| 制度 | 雇用保険 | 健康保険 | 労災保険 |
| 窓口 | ハローワーク | 健康保険組合・協会けんぽ | 労働基準監督署 |
| 原因 | — | 業務外 | 業務上 |
傷病手当金と労災は、原因が業務内か業務外かで分かれます。 ここを間違えると、受け取れるはずのものを逃します。
⚠️ リハ職は「労災」の可能性を検討する
先にこちらを扱います。見落とされやすいためです。
腰痛は労災になりうる
リハ職の職業病とも言える腰痛。移乗介助や体位変換が原因であれば、労災として認められる可能性があります。
厚生労働省は業務上の腰痛の認定基準を定めており、
- 突発的な出来事による腰痛(重量物の取り扱い中の急激な発症など)
- 腰に負担のかかる作業に相当期間従事したことによる腰痛
といった類型があります。
「リハ職だから腰痛は当たり前」と諦めて自費で受診している方がいますが、業務との関連があるなら、まず労災の可能性を検討する価値があります。
労災のほうが手厚い
| 傷病手当金(健康保険) | 労災(休業補償給付) | |
|---|---|---|
| 待期 | 連続3日 | 3日(事業主が休業補償) |
| 給付水準 | 日額の約3分の2 | 給付基礎日額の60%+特別支給金20% |
| 治療費 | 自己負担あり | 原則自己負担なし |
| 期間 | 通算1年6か月 | 治癒(症状固定)まで |
治療費の自己負担がない点と、給付水準の差は大きいです。
相談先
労災の申請は労働基準監督署です。職場が申請に協力的でない場合でも、労働者本人が請求できます。
まず主治医と労働基準監督署に相談してください。
⚠️ 認定されるかどうかは個別の判断になります。「必ず認められる」ものではありませんが、検討せずに諦めるのはもったいないという趣旨です。
失業給付(基本手当)
受け取れる条件
原則として、離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あることが必要です。
会社都合や、やむを得ない理由がある場合(特定受給資格者・特定理由離職者)は要件が緩和され、1年間に6か月以上で受給できることがあります。
いくらもらえるのか(基本手当日額)
失業給付は「1日あたりいくら」で決まり、これを基本手当日額といいます。計算は2段階です。
ステップ1:賃金日額を出す
退職前6か月の賃金の合計 ÷ 180
賞与は含みません。 ここは重要で、賞与の比率が大きい場合、年収から想像する額よりも低く出ます。一方、訪問の件数手当や各種手当は賃金に含まれるため、日額を押し上げます。
ステップ2:給付率をかける
賃金日額 × 50〜80%
給付率は賃金が低い人ほど高くなる仕組みです。在職中の給料が高い人ほど、率は50%に近づきます。
つまり受け取れるのは、在職中の給料のおおむね5〜8割です。全額は出ません。
なお、年齢区分ごとに基本手当日額の上限が設定されており、毎年8月1日に改定されます。高収入の場合は上限に当たるため、最新の金額は厚生労働省の発表で確認してください。
何日分もらえるのか(所定給付日数)
受け取れる日数は、退職理由と雇用保険の加入期間で決まります。
自己都合で退職した場合
| 雇用保険の加入期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
会社都合など(特定受給資格者・一部の特定理由離職者)の場合
年齢と加入期間の組み合わせで、90日〜330日と幅があります。自己都合よりはっきり手厚くなります。
なぜ辞めたかで、日数が倍以上変わります。 離職票の離職理由欄は必ず確認してください。事実と違う理由が書かれている場合、ハローワークに異議を申し立てられます。
結局、総額でいくらになるのか
基本手当日額 × 所定給付日数 = 受け取れる総額
イメージしやすいように、ひとつ例を出します。
例:賞与を除いた月給が28万円、勤続8年、自己都合で退職した場合
| 項目 | 計算 |
|---|---|
| 賃金日額 | 28万円 × 6か月 ÷ 180 = 約9,333円 |
| 基本手当日額 | 約9,333円 × 給付率(この水準ならおよそ5割) = 約4,700円 |
| 所定給付日数 | 勤続10年未満のため 90日 |
| 総額の目安 | 約4,700円 × 90日 = 約42万円 |
3か月分の給料には届きません。 ここは現実として押さえておいてください。「失業給付があるから当面は大丈夫」と考えていると、想定が狂います。
いつまでに受け取る必要があるのか(受給期間は1年)
見落とされやすいのがこれです。
失業給付には受給期間という期限があり、原則として離職日の翌日から1年間です。
所定給付日数が残っていても、この1年を過ぎると打ち切られます。 たとえば150日分の権利があっても、手続きが遅れて受給開始が遅くなれば、全部は受け取れません。
離職票が届いたら、すぐにハローワークへ行くべき理由がここにあります。
すぐに働けないなら、受給期間を延長できる
病気・けが・妊娠・出産・育児・介護などで30日以上働けない状態が続く場合、この受給期間を延長する申請ができます。
延長できるのは最長3年で、本来の1年と合わせて最長4年まで先送りできます。
これを使えば、「体調が戻ってから失業給付を受ける」という進め方が可能になります。心身の不調で退職した場合、知っているかどうかで結果が変わる制度です。
申請には期限があります。 働けない状態が続くと分かった時点で、早めにハローワークに相談してください。
いつから受け取れるのか(2025年4月の改正で待ち時間が短縮)
| 時期 | 給付制限期間 |
|---|---|
| 2025年3月まで | 2か月 |
| 2025年4月1日以降の離職 | 1か月 |
1か月に短縮されました。 待期7日間と合わせても、以前より1か月早く受給が始まります。
例外
- 5年以内に3回以上、自己都合で退職している場合:給付制限は3か月
- 会社都合の場合:給付制限なし(待期7日間のみ)
給付制限を解除できるケース
離職期間中、または離職日前1年以内に、雇用の安定や再就職に役立つ教育訓練等を受けた場合、給付制限が解除されることがあります。
認定資格の取得を考えているなら、ハローワークで相談する価値があります。
手続きの流れ
- 退職時に、勤務先から離職票を受け取る(届くまで2週間程度)
- ハローワークで求職の申し込み
- 待期7日間
- (自己都合の場合)給付制限1か月
- 認定日ごとに失業の認定を受け、振り込まれる
リハ職特有の注意点
リハ職は求人が多いため、ハローワークで「すぐ就職できる」と判断されやすい傾向があります。
また、非常勤やスポットの仕事を並行する場合は申告が必要です。掛け持ちが多い職種なので、事前にハローワークに相談しておくと安全です。
傷病手当金
受け取れる条件
- 業務外の病気やけがで療養中であること(業務上なら労災)
- 仕事に就くことができない状態であること
- 連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいること
- 休んだ期間について給与の支払いがないこと(または傷病手当金より少ないこと)
支給される期間と金額
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 待期 | 連続3日間(この3日は支給されない) |
| 支給開始 | 4日目から |
| 支給期間 | 通算して1年6か月 |
| 金額の目安 | 支給開始日以前の標準報酬月額をもとに計算した日額の約3分の2 |
支給期間は「通算」です。途中で復職して再び休んでも、支給されなかった期間は含まれません。
退職後も受け取れる場合がある
次の条件を満たせば、退職後も引き続き受け取れることがあります。
- 退職日(資格喪失日の前日)までに、継続して1年以上の被保険者期間があること
- 退職時に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること
つまり、在職中に受給を開始しておくことが鍵です。
⚠️ 注意:退職日に出勤してしまうと「働ける状態だった」と判断され、継続給付の要件を満たさなくなる可能性があります。必ず事前に健康保険組合に確認してください。
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「まず休む」という選択肢
リハ職は身体を使う仕事です。腰痛や頸肩腕の不調を抱えたまま働き続け、限界まで来てから辞める——このパターンを何度も見てきました。
制度上は、辞める前に休職して、回復してから次を考えるという順序も取れます。
- 収入が完全には途切れない
- 健康保険に在職のまま加入し続けられる
- 回復してから冷静に転職先を選べる
- 復職という選択肢も残る
身体の不調がある場合は、まず主治医に相談してください。診断書があれば休職の手続きが進められます。そして業務との関連があるなら、労災の可能性も一緒に相談してください。
その他に確認しておきたいこと
健康保険
退職後の選択肢は、①任意継続被保険者(原則2年間)②国民健康保険 ③家族の扶養に入る——の3つ。両方を試算して安いほうを選ぶのが基本です。
年金
厚生年金から国民年金への切り替えが必要です。収入が減る場合、保険料の免除・猶予制度が使えることがあります。
住民税
住民税は前年の所得に対してかかります。退職後、収入が減っているのに前年分の請求が来るため、事前に金額を把握しておいてください。
有給休暇
退職前に消化するのが原則です。進め方はリハ職の円満退職の進め方をご覧ください。
転職サービスをまだ決めていない方へ
リハ職は職種によって強いサービスが違います。理学療法士(PT)/作業療法士(OT)/言語聴覚士(ST)、それぞれのランキングで医師目線の比較基準を整理しています。
まとめ
- 退職後のお金は失業給付と傷病手当金。同時には受け取れない
- ⚠️ リハ職は労災の可能性を必ず検討する。腰痛は業務上と認められうる
- 労災のほうが給付が手厚い(治療費の自己負担なし、給付水準も高い)
- 労災は労働者本人が労働基準監督署に請求できる
- 失業給付は原則、離職前2年間に被保険者期間12か月以上
- 金額は在職中の給料のおおむね5〜8割。賞与は計算に含まれない
- 日数は自己都合なら90日・120日・150日(加入期間による)。会社都合なら90〜330日
- 受給期間は離職日の翌日から1年。過ぎると残っていても打ち切られる
- すぐに働けない事情があれば、受給期間を最長4年まで延長できる
- 2025年4月から、自己都合退職の給付制限が2か月→1か月に短縮
- 教育訓練を受けると給付制限が解除される場合がある
- 傷病手当金は連続3日の待期後、4日目から通算1年6か月、日額の約3分の2
- 在職中に受給を開始していれば、退職後も継続して受け取れる場合がある
- 「辞める」前に「休む」という順序も選べる
制度は知らなければ使えません。そして限界を迎える前に動いたほうが、選択肢は多いです。
特に腰痛については、「職業病だから仕方ない」で終わらせないでください。まず主治医と労働基準監督署に相談する。 それだけで結果が変わることがあります。
本記事は2026年9月時点の一般的な情報提供を目的としたものです。制度の要件・金額は改正される場合があり、個別の適用可否は状況により異なります。労災の認定は個別の判断となります。実際の手続き・受給可否については、必ずハローワーク、加入している健康保険組合(協会けんぽ)、労働基準監督署、市区町村の窓口、および勤務先の担当部署にご確認ください。